多くのクライアントは関節可動域制限を持っており,
セラピストは関節可動域制限に対して治療することが多いと思います.
しかし関節可動域制限のメカニズムを把握していないと治療ターゲット
を間違えてしまうかもしれません.
今回は関節可動域制限についてご紹介します.
拘縮の発生要因
拘縮とは,皮膚,骨格筋,関節包,靭帯など関節周囲に存在する軟部組織の
器質的変化に由来した関節可動域制限をいいます.ただし筋収縮が起きていないことが前提
となります.したがって,麻痺により筋緊張が亢進しているクライアントは筋緊張を取り除いた
あとの関節可動域制限を拘縮と呼びます.
拘縮は多くの先行研究で年齢,罹患期間,麻痺の重症度,痛み,浮腫などの
影響が指摘されています.しかし年齢という生物学的影響を除くと等しく
関節の不動が拘縮の発生をしているといえます.
ケガをして安静にしている.疼痛で動かさない.浮腫で関節を動かせない...
こうした関節の不動が拘縮の発生に繋がります.
不動期間と拘縮の進行状況
ラットの研究によると,ラットの足関節を12週間ギプスで固定して拘縮の程度をみていった
そうです.拘縮具合は不動後1週間でも生じ,最初の1か月で顕著に拘縮が進行していきます.
またその後は緩やかでありますが拘縮が進行していったそうです.
拘縮の責任病巣
拘縮の初期は骨格筋由来の拘縮の関与率が高い.
ラットの研究によると下腿三頭筋を切除して足関節を不動にした状態と,
下腿三頭筋を切除せず足関節を不動にした状態を比較することで骨格筋の拘縮
の関与率を研究したそうです.その結果,発症後初期(おおよそ一か月程度)は骨格筋の関与率
が高いことが分かったそうです.
つまり,クライアントの関節の不動期間が初期(おおよそ一か月程度)の場合は骨格筋に対して
アプローチすることで拘縮の改善効果が見込めるかもしれないということが分かります.
またその後は関節包や靭帯などの組織の関与率が高くなることが分かっています.
どの程度の期間関節を不動にしていたか聴取することが大切になります.
ギプスでの固定期間,ケガして動かさなかった期間,寝たきりになった期間...
こうしたことを聴取することで治療ターゲットも絞りやすくなるかもしれません.
骨格筋の責任病巣の中心
拘縮初期は骨格筋由来の関与が高いことがわかりました.しかし骨格筋でも筋長の短縮
による影響なのか,筋の伸張性の低下によるものなのかはたしてどちらなのでしょうか.
これもラットの研究により拘縮具合をみていったそうです.
そうすると,不動1週間に約11パーセントの筋の短縮は認められたものの,その後は
不動期間が延長しても変化はみられなかったそうです.
また拘縮の進行具合に比例して筋の伸張性の低下がみられたことから,骨格筋の拘縮
の影響は,筋の短縮よりも伸張性の低下による影響が大きいとという結果となったそうです.
まとめ
私たちは,どこの部位の何に対して治療しいているか把握することで
治療戦略が変わってくると思います.ぜひ参考にしてください.
また,今回の知識は沖田実先生のセミナーから得た知識です.
沖田実先生は本も出版されているのでそちらも参考にしてみてください.