触診技術の向上~小胸筋編~

 触診技術を向上することで治療,評価技術の精度

を上げることができます.触診方法については以前記事

にした「触診技術の向上が治療,評価の精度をあげていく

をご参照ください.今回は小胸筋の触診方法をご紹介いたします

触診前に知ろう ~小胸筋とは~

 肩甲骨は上腕骨の動きに対して肩甲骨の向きを合わせ補正する能力が必要です.

肩甲骨による向き調整ができない場合はどうなるのでしょうか.

肩関節の外転運動で考えていきます.

 肩関節が外転運動に伴い,上腕骨近位は下方へ移動していきます.

上腕骨の動きに対して肩甲骨が下方へ潜り込めないと上腕骨頭が関節内から逸脱してしまいます.

上腕骨頭が関節内から逸脱しないように肩関節周囲の筋の緊張を高めて固定,あるいは疼痛による

危険信号を発することもあります.つまり上腕骨を動かす場合に肩甲骨の向き調整が必要不可欠

なのです.

肩甲骨の動きに制限がある場合は,上腕骨に対する肩甲骨の向き調整ができなくなります.

 では小胸筋を考えていきます.小胸筋は肩甲骨に付着する筋であり小胸筋がタイトネスの

場合肩甲骨を前傾,下制,外転,下方回旋に誘導されます.逆に後傾,挙上,内転,上方回旋

の制限となり肩甲骨の向き調整が不十分となります.それでは肩関節屈曲で考えていきます.

矢状面で考えると肩関節挙上に伴い上腕骨近位は下方へ移動していきます.

前傾している肩甲骨が上腕骨挙上に伴い後傾していかないと上腕骨頭が関節内から逸脱してしま

います.前述で話したように小胸筋がタイトネスの場合,肩甲骨後傾の制限となるため上腕骨

に対する肩甲骨の向き調整が不十分となり可動域制限,肩関節周囲の緊張の亢進,疼痛が誘発され

やすくなります.

上腕骨に対する肩甲骨の向き調整が可能となるためには,無数に存在する上腕骨の動きに対して

肩甲骨が方々に動けることが必要です.肩甲骨に付着する小胸筋は,肩甲骨の向き調整の制限

となり得るため触診できるようにしましょう.

起始…第2~5肋骨の前面 停止…肩甲骨の烏口突起

筋連結…烏口腕筋,上腕二頭筋短頭,外肋間筋

小胸筋は大胸筋の深層に位置する筋です.

触診方法

① 第2肋骨上で胸骨より4横指外側をランドマーク(★)します.

② ①と烏口突起を結び想定線1を考え横断するように触診していきます.

③ 鎖骨中線と第5肋骨との交点をランドマーク(★)します.

④ ③と烏口突起を結び想定線2を考え横断するように触診していきます.

注意点:烏口突起周囲は大胸筋に覆われていない領域があり烏口突起より

    触診すると触知しやすいです.

まとめ

小胸筋は治療対象となることが多く触診することが多々あります.ぜひ試してみてください.

また,「棘下筋の触診方法」も記事にしてあるので合わせてみてください.

 ちなみに今回の知識は体表解剖学研究会のセミナーや骨格筋の形と触察法を

もとに記載しています.骨格筋の形と触察法は上記のような骨指標,想定線

が記載されており,触診するためには欠かせない本となっています.また献体を用いて

筋の位置等の解剖の知識も得ることができます.興味がある方は購入してみてください.

 

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