私たちは治療をしていく中で,あるいは評価をしていくなかで
触診というものは欠かせません.筋,骨,靭帯,神経を触ることができなければ
治療することも評価することも困難です.言い換えると触診ができるように
なれば,治療することも評価することもできるようになると思います.
今回は触診について紹介したいと思います.
触診の方法
触診の方法はいくつかあります.特に筋を触診することが多いと思いますので
筋の触診方法をご紹介します.
圧迫
「圧迫」とは筋を押すことによりその筋の存在を感じ取る方法です.
「圧迫」は単純に押すだけでなく,押した状態を保ったまま,筋の表面上を滑らせることです.
「圧迫」で触診するにはpointがあります.
point1 筋の縁を捉える
point2 筋腹の走行に対して直行する方向に横断していく
point3 筋腹の形状を3次元で捉える
筋の縁を捉えて横断することで,筋の輪郭を把握することができます.筋には別の筋肉と
接している場所があります.その筋間にセラピストの手指を置くことが大切です.
また多くのセラピストは筋に対して2次元的に触る傾向があります.筋はボリュームがあり,
立体的となっているため筋全体を捉えるためには3次元で捉える必要があります.
つまみ
「つまみ」とは筋を皮膚とともに手指で挟むことによりその存在を感じ取る方法です.
浅層に位置する筋を触診する際に有効な手技です.逆に深層に位置している筋は,広い範囲
で骨に付着していることが多く「つまみ」は難しくなっています.
さすり
「さすり」とは皮膚の表面上を指腹や手掌で滑らせながら移動させることで,筋の膨隆やくぼみを
感じ取る方法です,押す力はもっとも弱い手技であり,本来の筋の形や位置を最も正確に確認
できる手技となってます.
筋の位置を把握
一番大切なことは,筋のおおよその位置,走行を把握することです.
例えば,外側広筋を思い浮かべてください.
イラスト上では外側広筋は大きいイメージはありませんが,筋の起始は大転子前面,粗線の外側唇
です.外側部,後面の大部分を占めておりイメージしているより遥かに大きいです.
私たちは学生の頃,教科書で学んできており2次元的に捉える傾向があります.
筋の走行のイメージが正しくないと触知しているものが何か判断が難しくなります.
他にも自分の肩甲挙筋を触ってみてください.
多くのセラピストは後面を触ろうとしたのではないでしょうか.
しかし肩甲挙筋の起始は第1~4頸椎の横突起であり触診するためには頸部の側方から触る
必要があります.
筋の走行する位置を把握することで,筋の縁を捉えることができ触診することができます.
筋の位置を把握するためには,
point1 筋の起始,停止を把握する
point2 骨指標をもとに想定線を描く
ことが大切です.実際の触診をご紹介します.
小円筋の触診方法
例えば,小円筋に対して触診を行います.
後面にある筋なので被験者は腹臥位をとります.
まずは筋の起始,停止を把握します.
起始:肩甲骨外側縁の中央1/3 停止:上腕骨大結節
おおよその走行を把握したら今度は骨指標を確認していきます.骨指標をもとに
筋の走行をイメージします.
骨指標:起始…下角から2横指頭方 停止…大結節の上端から1横指尾方
骨指標を結んだ線が小円筋の想定線になります.
想定線をイメージしながら「圧迫」を用いて筋を触診していきます.
注意点:棘下筋下部線維と間違えないように
0.5横指程度ほどの幅の筋腹を確認する.
一連の流れはこんな感じです.
まとめ
一朝一夕では難しく私も常に練習しています.セラピスト同士で触診しあったり,
なんとなくクライアントに触るのではなく正確に触診していくことの積み重ねが触診技術
をあげ治療,評価の精度を上げていくと思います.
ちなみに今回の知識は体表解剖学研究会のセミナーや骨格筋の形と触察法を
もとに記載しています.骨格筋の形と触察法は上記のような骨指標,想定線
が記載されており,触診するためには欠かせない本となっています.また献体を用いて
筋の位置等の解剖の知識も得ることができます.興味がある方は購入してみてください.