肩関節の夜間時痛は姿勢の影響が考えられる理由

 「夜痛くて寝れないんです.」

夜間時痛を訴えるクライアントは多いと思います.夜間時痛は日中の安静時

の疼痛とは考え方を変えないといけない場合があります.今回は肩関節の

夜間時痛についてご紹介します.

安静時痛と夜間時痛の違い

 安静時痛と夜間時痛は異なる場合があります.

安静時痛とは筋の収縮,伸張や荷重時の痛みとは異なり安静にした状態で疼痛が出現

するため炎症症状が示唆されます.一方夜間時痛は炎症症状以外にも出現する場合があります.

例えば,夜間就寝時の寝方や体動時の動き,布団の硬さなど夜間の姿勢,動作,環境によって

疼痛が誘発される場合があります.今回は姿勢による疼痛の影響を考えていきます.

肩関節の夜間時痛の原因とは

 夜間時痛の原因の一つは関節内圧,骨内圧の上昇が考えられます.

日中の肩関節の状態と夜間の肩関節の状態はどう違うのでしょうか.

日中は比較的坐位,立位と抗重力姿勢で過ごされている場合が多いと思います.逆に夜間では

背臥位をとり除重力姿勢です.その姿勢の違いにより肩関節に与える影響を考えていきます.

坐位,立位では重力に伴い上腕骨は下方へ引っ張られます.下方へ引っ張られた

烏口肩峰弓下が開大することで肩峰下圧が軽減します.

一方,背臥位では除重力となり上肢の自重が解除されるため烏口肩峰下弓の開大が起こりません.

そのため肩峰下圧,骨内圧が上昇することで疼痛が出現することがあります.

関節内圧の上昇による疼痛

 ほかにも肩甲骨は胸郭の形状に沿って位置するため,前額面に対して20°~30°程度角度

を持っています.そのため,肩甲上腕関節の関節包が前,後,上,下ともに緊張しない場所

は軽度屈曲,外転位となります.しかし背臥位では上腕がベッドについた際は肩関節は

軽度伸展位となり前方の関節包が伸張され関節内圧が上昇します.

例えば炎症や筋,関節包の癒着によりもともと関節内圧が高いクライアントがいた

場合に背臥位となり関節内圧をさらに高めることとなり疼痛が惹起されることが

あります.

夜間時痛への対処法

 そのため,関節内圧が高くならないような姿勢を作ることが夜間時痛を減少させるポイントです.

関節包が前,後,上,下とも緊張が釣り合う場所(弛みの肢位),scapular plane(肩甲骨面)

上にセッティングすることが大切です.ただ肩甲骨は胸郭上を動くため肩甲骨の向く方向が

変化することから一概にどの角度と表記するのは難しいですが,pointとしては...

point1 肩甲棘を延長した線に上腕骨(上肢質量中心点)を合わせる

point2 肩甲棘を延長した線上に内側上顆,外側上顆を合わせる

point3 肩甲骨周囲の緊張具合を触診して微調整する

point4 弛んだ肢位を確認して環境調整(枕,タオルのセッティングなど)をしていく

こうしたセッティングにより関節内圧が減少し疼痛軽減する場合があります.

 あるいは,筋緊張の亢進により疼痛が誘発される場合も考えられます.

背臥位の姿勢でも肩関節がベッド上で浮いており不安定性から筋緊張が亢進している

ことが多々みられます.


こちらも枕,タオル等で支持基底面を増やし安定させることで筋緊張の

軽減,疼痛軽減につながることがあります.

まとめ

肩関節の夜間時痛の原因として関節内圧の上昇,筋緊張の亢進が考えられます.

環境調整を行うことで夜間時痛の軽減が見られることがあるので是非

参考にしてみてください.

最新情報をチェックしよう!