上半身質量中心と下半身質量中心から姿勢を診ていく必要性

 一般的に身体重心の位置は第2仙骨の前方,あるいは成人男性では身長の約56%,

女性では約55%といわれていますが,どの位置なのかよくわからない...

また身体重心の位置を見てもそれが治療にどう反映したらいいかわからない...

そんなとき,この上半身質量中心と下半身質量中心から姿勢を診ていく必要性があり,

これから解説していきます.

上半身質量中心と下半身質量中心とは

上半身と下半身を上下に二分して,それぞれの質量中心位置を上半身質量中心,

下半身質量中心と位置付けます.

上半身質量中心は第7~9胸椎高位

下半身質量中心は大腿部の中央と中上2/3点の間

となります.また,この両点を結んだ線の中点が身体重心位置となります.

上半身質量中心と下半身質量中心から姿勢を診ていく方法

 姿勢を保持していくためには,身体重心が支持基底面上にないといけません.

支持基底面から外れた場合,人は新しい支持基底面を作るか,作れない場合は転倒

してしまいます.身体重心を支持基底面に保持するためには,身体重心をなるべく

動かさないことが大切です.

 では,例えば上半身質量中心が後方に移動した場合,身体重心を動かさないように

するためにはどうしたらよいでしょうか.

そうです.下半身質量中心を前方へ移動することで,身体重心を動かさないで

身体重心を支持基底面上に保持することができます.

上半身質量中心と下半身質量中心でバランスをとることで,姿勢を保持します.

姿勢を診ていくときこの上半身質量中心と下半身質量中心の位置関係を診ることで

身体重心位置も把握することができます.

それでは,いろいろな姿勢を診ていきましょう.

いろいろな姿勢を診てきて少しは慣れてきたと思います.

臨床応用

 例えば,円背の患者ではどうでしょうか.

円背により上半身質量中心が後方に移動しています.

では姿勢を保持するために,下半身質量中心はどうするのでしょうか.

そうです.下半身質量中心を前方移動させると身体重心は動かずに

姿勢を保持することができます.下半身質量中心を前方移動させるためには

膝を屈曲することで前方移動が可能です.円背患者で膝を曲げている人は上半身

質量中心,下半身質量中心からも説明がつきますね.膝が屈曲すると膝へのストレスが

加わるため疼痛が出現したりします.膝が痛いから膝だけを診るのではなく,

円背により後方移動している上半身質量中心を少しでも抑制することができれば,

下半身質量中心の前方移動を抑えらます.そうすると膝の屈曲も減り,

膝へのストレスも減る可能性があります.

上半身質量中心と下半身質量中心から全体の姿勢を診ることで治療方法も変わって

くるかもしれません.

姿勢を評価するのはとても難しいです.少しでも姿勢を診るのが楽しくなれば幸いです.

また,別記事で質量中心点からの治療の考え方を書いてあるので合わせて読んでみてください.

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