脱水を見逃さないためのフィジカルアセスメント

 高齢者は一日の水分量も少なく,口渇の感受性も低下しているため,脱水と常に背中合わせにありま

す.また,高齢者は症状を自覚しにくく顔面紅潮・発熱・血圧低下などで発見されることも多く認め

ます.高齢者という条件だけでも脱水を考えてアセスメントする必要があります.

脱水とは

 脱水とは,体液(細胞外液)の喪失により生じる病態のことをいいますが,臨床では血管内脱水(循環血

液量)を指すことが多いです.そのため水分を摂取する量が少ない場合や水分を体外へ排出する量が多

い場合に脱水は生じます.

水分を摂取する量が少ない場合

 水分を摂取する量が少ない場合は飲料の減少だけでなく食事のなかに含まれる水分量も影響します.

そのため水分摂取量,食事摂取量が少ない場合は脱水するリスクがあります.また高齢者の場合は夜間

の排尿を嫌い就寝前に意識的に水分摂取を控える傾向がありますので確認が必要です.

水分を摂取する量が少ない場合

 水分を摂取する量が少ない場合は炎天下,高温多湿の環境や発熱により体内の水分が排泄されて

しまうことが一つ考えられます.その他に下痢が続いている場合も危険リスクとして考えられます.

低ナトリウム血症

 また脱水だけでなく低ナトリウム血症も同時に考える必要があります.食事摂取量の減少,下痢,

あるいは電解質のない水を大量に飲んでる場合でも血液中のナトリウム濃度が薄まった結果,低ナトリ

ウム血症が出現するリスクがあります.低ナトリウム血症により血液の浸透圧が低下するため水分が脳

細胞に移動(浸透圧の特性により浸透圧の低いところから高いところへ移動するため)して脳浮腫が起こ

る可能性があります.そのため頭痛や嘔吐,傾眠などの症状が起こる場合があるので注意が必要です.

 そのため日ごろから気温などの環境,水分摂取量,食事量,排泄状態を確認しておく必要がありま

す.

フィジカルアセスメント

 脱水は循環血液量が低下するため血圧が下がり,頻脈となります.また循環血液量が低下するため対

外に排出しないように乏尿(濃縮尿)になります.そのため血圧,脈拍,尿量の確認が必要です.また低

ナトリウム血症の症状がないか併せて聴取していきます.そのあとはフィジカルアセスメントで確認し

ていきます.

①ハンカチーフサイン:陽性

 皮膚をつまんで離しても10秒以内に跡が戻らない場合はハンカチーフサイン陽性であり脱水を疑いま

す.

②皮膚の乾燥や鱗屑(りんせつ:粉をふいている状態)の確認

 皮膚角質層の水分量が低下するため乾燥肌を呈する場合があります.

③口腔内の舌の乾燥

 舌の正中線の存在や亀裂を診ます.特に舌には水分を貯留する皮下組織がなく忠実に水分不足を反映

するため確認が必要です.

まとめ

今回は症状のみを記載しましたが,加えて血液データ(BUN,Cr,Na),利尿剤など薬剤の確認も併せて

確認するとよいかと思います.また「疲れの原因を知るためのフィジカルアセスメント」を併せてみて

ください.

今回の参考文献は日本離床研究会が出版している本で,写真も多く見た目も読みやすく難しい言葉も

ほとんどない本となっています.

離床したいけど,怖いからできない.患者がどういう状態かわからない.学生の頃は

習ったことがなかったフィジカルアセスメントをわかりやすく解説しています.

系統別,症状別に分かれているので患者さんにすぐに適応できます.

興味のある方は購入してみてはいかがですか.

日本離床研究会は勉強会も各地で開催していますので合わせて参加されるとより

深く学べると思います.

最新情報をチェックしよう!