一般的には骨密度は20歳前後をピークに減少していきます.高齢者の多くは骨密度が低く骨粗しょう
症の方が多いと思います.そのため私たちセラピストは骨の生成に必要なカルシウムの摂取を促すこと
が多いと思います.しかしカルシウムは体内で吸収されにくいためカルシウムのみでは不十分です.他
のミネラル,ビタミンなどを併せて摂取することが必要です.今回は骨粗しょう症にならない,あるい
は改善するための栄養をご紹介します.
カルシウムを積極的に摂取する
まずミネラルというのは,体内で合成することができないため食事から摂取する必要があります.カ
ルシウムはミネラルに分類され,体内で最も多く存在するミネラルでもあります.また日本人のカルシ
ウム摂取量は目標値を下回っているため,食事でしっかりと意識して摂取しなければ不足してしまい
す.
カルシウムの99%は骨,歯の構成成分であり,不足した場合血液中のカルシウム濃度を一定に保つため
に貯蔵庫である骨に含まれるカルシウムを吸収し利用します.そのた長期的な不足は骨のカルシウム量
を減少させる原因となってしまいます.カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品,大豆製品,小魚,小
松菜,水菜などに多く含まれています.またカルシウムは食品によって吸収率が変わります.最も吸収
率が高いのは,乳製品です.牛乳はカゼインというたんぱく質がカルシウムの吸収を促すと言われてい
るため最も吸収率が高いとされています.
食品 | 吸収率 |
乳製品 | 約50% |
小魚 | 約30% |
野菜 | 約20% |
ビタミンDやタンパク質,ビタミンKを摂取し,カルシウムの吸収を促進させる
ビタミンDは,カルシウム吸収やタンパク質の合成を促進させます.ビタミンDの多く含む食品として
は,魚介類やきのこ類などがあります.
また,ビタミンDは日光を浴びることで体内で生成できるため太陽が出ている時間帯に外に出かけるこ
とも必要です.良質なたんぱく質も同様にカルシウムの吸収を促進させます.
また,ビタミンKもタンパク質の合成するのに欠かせない成分であります.
ただしたんぱく質の過剰摂取は尿へのカルシウムの排泄を促すため,あくまで適量が必要です.
リン,マグネシウムのバランスを考える
リンの80~85%はカルシウムやマグネシウムと結合し骨や歯を形成します.しかしリンの過剰摂取
によって血液中のリンの濃度が上昇すると,骨から血液中にカルシウムを放出してしまい低カルシウム
血症となりやすいです.リンは食品添加物に含まれており過剰摂取が問題となっているためリン酸塩を
含む加工食品の取りすぎに注意が必要です.また,カルシウムとリンとの摂取バランスは「1:1」~
「1:2」のときにカルシウムの吸収率が高くなると言われています.
マグネシウムの60~65%は骨に存在してカルシウムやリンとともに骨を構成しています.マグネシ
ウムは体内でのカルシウム濃度を調整しているため,カルシウムを多く摂取するとマグネシウムが不足
しやすくなります.マグネシウムとカルシウムが「1:2」が望ましい.
シュウ酸,フィチン酸などのカルシウムの吸収阻害する成分を控える
ほうれん草に含まれるシュウ酸や豆類や穀類に多いフィチン酸はカルシウムを不溶性にして吸収率を低
下させる.ゆでることによって減少するため調理方法を工夫する必要があります.
アルコール,カフェインの過剰摂取を控える
アルコールは適量であれば問題ありませんが,過剰摂取すると尿中にカルシウムが排泄されたり,ア
ルコールがカルシウムの吸収を阻害して骨量の低下を招きます.
また,カフェインは利尿作用があるため過剰摂取すると尿と一緒にカルシウムも排泄されてしまうため注意が必要です.
まとめ
①カルシウムを積極的に摂取する.
②ビタミンDやタンパク質,ビタミンKを摂取し,カルシウムの吸収を促進させる.
③リン,マグネシウムのバランスを考える.
④シュウ酸,フィチン酸などのカルシウムの吸収阻害する成分を控える.
⑤アルコール,カフェインの過剰摂取を控える.
骨粗しょう症は,栄養だけでなく,女性のホルモン分泌の変化や運動量によっても変化します.女性は
閉経後女性ホルモンであるエストロゲン分泌が低下することで破骨細胞の抑制が不十分となり骨密度が
低下します.また骨は負荷がかかるほど骨をつくる細胞が活発となり、強くなる性質があります。運動
による骨の刺激が減少した場合でも骨はもろくなってしまいます.栄養,運動,年齢など総合的に考え
る必要があります.