触診技術の向上~縫工筋編~

 触診の技術を向上することで治療,評価技術の精度を上げることができます.触診方法については

以前記事にした,「触診技術の向上が治療,評価の精度をあげていく」をご参照ください.今回は縫工

筋の触診方法をご紹介いたします

触診前に知ろう ~縫工筋とは~

縫工筋は臨床上メカニカルストレスを受けやすい部位です.特に停止部は荷重時に伸張ストレスを受け

ることが多く,疼痛を惹起しやすい部分です.荷重時の伸張ストレスといってもいろんな要因が考えら

れいくつかご紹介します.

①膝関節外反位を呈し停止部に伸張ストレスが加わり疼痛が生じる場合.

②下腿が外旋位を呈し停止部は伸張ストレスが加わり疼痛が生じる場合.

③大腿内旋位を呈することで下腿は相対的に外旋位となり停止部に伸張ストレスが加わり疼痛が

生じる場合.

④上半身質量中心が外側に偏位し重心線が膝関節より外方を通過し停止部に伸張ストレスが加わり疼痛

が生じる場合.

このように下腿のアライメント,大腿のアライメント,上半身質量中心の位置関係と多種多様の原因に

より疼痛が起こります.そのため精査して原因を特定していかない限りメカニカルストレスは加わり続

けることとなり疼痛が改善しない場合が多くあります.例えば,荷重時で疼痛が生じている場合は,下

腿外旋位に徒手誘導した状態で荷重を加えた場合と内旋位で荷重を加えた場合を比較してみて疼痛の変

化が生じるか評価します.外旋位で疼痛が増強,内旋位で疼痛軽減する場合は下腿のアライメントが影

響していると判断し下腿のアライメントを改善していきます.また下腿がアライメント不良となった原

因も精査していきます.下腿のアライメントだけでなく荷重下で大腿内旋外旋誘導,内外反誘導,上半

身質量中心の位置を誘導しての疼痛の変化を評価していくと治療対象が見えてくるのではないでしょう

か.しかし多くのクライアントは原因が混在しているため注意が必要です.また,停止部は薄筋,半

腱様筋とともに鵞足を形成しているため,それぞれ鑑別する必要もあります.

起始…上前腸骨棘 停止…脛骨粗面内側部

筋連結…大腿筋膜張筋

触診方法

① 上前腸骨棘の2横指下方をランドマーク

② 大腿の長軸の中央部で大腿部の前後径の中央をランドマーク

③ 内側上顆の下方または内側広筋の下方をランドマーク

④ ①~③を結び想定線を描き筋を触知していく.

注意点:筋腹は2横指程度の幅,表層にある筋であるため,深く圧迫する必要はなし.

まとめ

 前述でも話しましたが,縫工筋はメカニカルストレスが加わりやすい部位であり,疼痛が生じやすい

ため触診することも多々あります.ぜひ試してみてください.また「棘下筋」,「小胸筋」,「肩甲挙

」,「棘上筋」,「梨状筋」の触診方法も記事にしてあるので併せて読んでみてください.

 ちなみに今回の知識は体表解剖学研究会のセミナーや骨格筋の形と触察法をもとに記載しています.

骨格筋の形と触察法は上記のような骨指標,想定線が記載されており,触診するためには欠かせない本

となっています.また献体を用いて筋の位置等の解剖の知識も得ることができます.興味がある方は購

入してみてください.

 

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