触診の技術を向上することで治療,評価技術の精度を上げることができます.触診方法については
以前記事にした,「触診技術の向上が治療,評価の精度をあげていく」をご参照ください.今回は棘上
筋の触診方法をご紹介いたします
触診前に知ろう ~棘上筋とは~
以前は大結節を上関節面,中関節面,下関節面と3つに区分してその中で棘上筋は上関節面に位置し
ていると考えられていましたが,,,
最近の知見では大結節でも上関節面だけでなく中関節面まで幅広く位置していることがわかりまし
た.また個体によっては小結節まで付着する場合もあるそうです.
棘上筋が幅広く付着していることから運動学上前方部分と後方部分で作用が変化することがわかり前
方線維と後方線維に分けて記載する本もあります.解剖学上は一つの筋束であるため二つに分類するこ
とはありません.
肩関節の運動軸に対して前方に位置するものを前方線維.後方に位置するものを後方線維
としています.前方線維は運動軸に対して前方に位置しているため内旋に作用します.
逆に後方線維は運動軸に対して後方に位置するため外旋に作用します.棘上筋の前方部分と
後方部分で触れてみて内旋運動で前方線維が,外旋運動で後方線維が収縮するのが確認できると
思います.
また作用が異なるため制限因子も精査することが可能です.
内転,外旋にて制限が強い場合は前方線維.内転,内旋にて制限が強い場合は後方線維と精査すること
が可能です.
起始…肩甲骨棘上窩 停止…上腕骨の大結節上,中関節面
筋連結…棘下筋,肩甲下筋
触診方法
① 上角の触診
棘三角より3横指頭方にある骨突出部を触知
(前頭部より下方へ圧迫すると触知しやすい)
② 上角より2横指外側をランドマーク
③ ②と大結節を結んで想定線を描き横断するように触診します
注意点:浅層に僧帽筋上部線維が位置しているため鑑別に注意.棘上筋は僧帽筋上部線維と比較して
筋腹が2㎝程度厚みがあるので弾力感の違いや筋の走行が違うところも鑑別可能なポイントで
す.
まとめ
棘上筋は肩関節の疼痛回避姿勢にて伸張性が低下しやすい筋でもあり触診をすることが多々ありま
す.ぜひ試してみてください.また「棘下筋」,「小胸筋」,「肩甲挙筋」の触診方法も記事にしてあ
るので併せて読んでみてください.
ちなみに今回の知識は体表解剖学研究会のセミナーや骨格筋の形と触察法をもとに記載しています.
骨格筋の形と触察法は上記のような骨指標,想定線が記載されており,触診するためには欠かせない本
となっています.また献体を用いて筋の位置等の解剖の知識も得ることができます.興味がある方は購
入してみてください.