触診技術の向上~梨状筋編~

 触診の技術を向上することで治療,評価技術の精度を上げることができます.触診方法については

以前記事にした,「触診技術の向上が治療,評価の精度をあげていく」をご参照ください.今回は梨状

筋の触診方法をご紹介いたします

触診前に知ろう ~梨状筋とは~

 梨状筋の過緊張は梨状筋症候群として坐骨神経障害を呈する場合があります.坐骨神経は梨状筋下孔

を通過して梨状筋との間で絞扼性神経障害を生じやすい部位です.また通常梨状筋下方を通過する例が

圧倒的に多いのですが,なかには腓骨神経部が梨状筋内を貫通する例や上方から梨状筋を挟む例など破

格が存在します.

 股関節の機能解剖をみていきます.股関節は解剖学的肢位では前方部分の骨頭の被覆率が低くなって

います.そのため強靭な靭帯,関節包が前方を覆っています.

 梨状筋は股関節を外旋あるいは外転に作用します.また梨状筋は大腿骨頭の後方を走行しています.

そのため梨状筋の過剰使用による緊張の亢進は股関節の外旋作用だけでなく骨頭を前方へ押し込むベク

トルも生じます.骨頭が前方偏位した状態で股関節屈曲を行うと前方でインピンジメントが発生し疼

痛,可動域制限を起こしやすくなります.その関節の運動に伴い骨盤と大腿骨が衝突することを

FAI(femoroacetabular impingement)と呼びます.

骨頭が前方偏位した場合,先ほど述べたように解剖学的肢位では股関節の前方部分は骨頭の被覆率が低

いため靭帯,関節包で前方偏位を制御することになります.しかしそれでも制御不十分の場合には筋性

での制御となります.骨頭の前方部分を通過する筋で代表的な筋として腸腰筋があります.骨頭の前方

偏位に対して腸腰筋が制御するため緊張を高める場合もあります.腸腰筋の緊張の亢進が梨状筋による

場合もみられるのです.梨状筋の緊張の亢進は神経絞扼,骨頭の偏位による疼痛,可動域制限,その他

の組織の緊張亢進などさまざまな影響があります.

起始…仙骨の前面で第2~4の前仙骨孔の周辺 停止…大腿骨の大転子の後近位端

筋連結…中殿筋,小殿筋

触診方法

①上後腸骨棘,下後腸骨棘を触知する.

  上後腸骨棘…腰部と臀部の境界の高さで,正中線から3~4横指外側に位置するくぼみを触知しま

す.そのくぼみからさらに2横指尾方に突出した隆起.

  下後腸骨棘…まず坐骨結節を触知します.その後斜め頭方に向かって仙結節靭帯を触知します.仙

結節靭帯を辿ると仙骨の外側部にぶつかり,そこから頭方に向かって辿り骨の角を触知した部位.

②上後腸骨棘と下後腸骨棘との中点をランドマークします.

③大転子の後内側近位端をランドマークします.

④ ②と③を結ぶ線を想定して横断するように触診していきます.

注意点:梨状筋を覆う大殿筋は厚いため,ある程度指で押し込む必要があります.しかし,梨状筋は深

層筋であり過緊張を起こしやすい筋でもあるため痛みを伴うことがあるため注意が必要です.指を押し

込む際は勢いよく指を押し込むのではなく,じんわりと少しずつ押し込むと疼痛が抑えられるので実践

してみてください.また大殿筋筋束の走行は梨状筋の走行とほぼ一致するため間違えないようにする必

要があります.梨状筋の外側頭方には中殿筋が隣接しているため,中殿筋と梨状筋との間の溝に指をあ

て押し込むと触知しやすいです.

まとめ

 梨状筋を触診をすることが多々あります.ぜひ試してみてください.また「棘下筋」,「小胸筋」,

棘上筋」,「肩甲挙筋」の触診方法も記事にしてあるので併せて読んでみてください.

 ちなみに今回の知識は体表解剖学研究会のセミナーや骨格筋の形と触察法をもとに記載しています.

骨格筋の形と触察法は上記のような骨指標,想定線が記載されており,触診するためには欠かせない本

となっています.また献体を用いて筋の位置等の解剖の知識も得ることができます.興味がある方は購

入してみてください.

 

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