感覚情報の80%は視覚情報といわれているくらい視覚がもたらす影響は数知れません.PNFでも視覚を
利用することで治療効果を上げることは多々あります.今回は視覚の効果についてご紹介します.
フィードバック機構の活用
目的の動作を行う上で視覚によるフィードバック機構は必要不可欠です.視覚より情報を取り入れ修正
していくことでより高度で精度の高い動作を獲得することができます.PNFにおいてもパターンなどは
とても複雑な動きをします.例えば上肢-屈曲-外転-外旋パターンでは,手指-伸展,手関節-撓屈・伸
展,前腕-回外,肩関節-屈曲・外転・外旋,肩甲骨-後方挙上を誘導していきます.抵抗運動にて目的動
作を誘導するだけでなく,視覚情報を取り入れ運動を学習することはとても大切になってきます.
ミラーニューロンの賦活化
目的動作をクライアントに観察させるのは運動を理解させるためだけではありません.他者の動きを見
ている時も自身が動きを行った時と同じ運動前野腹側部の活動が活性化すると言われています.他人の
行為を観察しシュミレートするとき,観察時に活動する後頭葉,頭頂葉のみならず,運動前野,小脳の
領域も活動します.実際に動かなくてもみるだけで脳の領域は活性化するため,視覚による観察する行
為はとても大事ですね.
筋活動への促通
眼球運動は頭部,体幹の動きを誘導するのに大切な役割があります.
例えば,目線を上方に向けた場合,頭部帽状腱膜・頭皮筋膜‐脊柱起立筋・腰仙筋膜‐仙結節靭帯‐ハムストリングス‐下腿三頭筋‐足底筋膜‐足趾屈筋というバックラインの活動性の向上がみられます.
視線と合わせて上肢挙上運動を合わせることで,バックマッスルの活動性をさらに高めることが可能です.
逆に目線を下方へ下げると胸鎖乳突筋‐大胸筋‐腹直筋・腸腰筋‐内転筋‐大腿直筋‐前脛骨筋-足趾伸筋群とフロントラインの活動性を高めることが可能です.
PNFにおいても背筋群の活動性,腹筋群の活動性に応じて目線を使い分けるなどどの筋活動を促したいかで目線を選択することも必要になってきます.
目線がもたらす人の印象
視覚とは多少異なるかもしれませんが,人の目線によって他者に抱く印象が変わります.コミュニケー
ションの93%は言語以外の非言語的コミュニケーションによると言われています.コミュニケーション
やラポールを形成する上で,印象を左右する目線はとても大事になってきます.一般的に「目線を合わ
せるように」と指導を受けることが多いと思います.しかし例えば身長の低い社長がいた場合に果たし
て社員は膝を曲げて目線を合わせて会話することは正しいのでしょうか.目線を合わせるというのは,
目線を水平に合わせるのではなく互いの耳介部と口唇上部の延長線上を合わせることが大切です
また,先ほど伝えた目線がズレた場合人はどんな印象になるのでしょうか.
先ほどの目線より下を向いている場合は疑っているように見えます.
逆に目線が上を向いている場合は見下しているように見えます.
視覚がもたらすのは印象をも左右されるのです.人の印象はとても大切ですので意識してみてくださ
い.
まとめ
視覚は感覚情報のなかでも多くの割合を占めており様々な影響を与えます.フィードバック機構,ミラ
ーニューロンの賦活化,筋活動への促通,人の印象など作用しラポール形成をはじめ治療効果に影響し
てくるため参考にしてみてください.