肩関節の疼痛回避姿勢から関節可動域制限を考える

 肩関節に疼痛が出現した場合多くのクライアントは疼痛回避姿勢をとります.

炎症期に疼痛回避姿勢をとることで関節内圧を減少させ疼痛緩和を図ることが多くあります.

しかしその疼痛回避姿勢が拘縮期に移行すると関節可動域の制限をきたしやすく早めの対処が必要で

す.

疼痛回避姿勢

肩甲上腕関節の構造上解剖学的肢位では骨頭の被覆率は上方,前方で被覆率が低下しています.その

ために強靭な靭帯,関節方が前方部分に位置しているのですが,上方,前方では関節内圧が高まりや

すい環境にあります.炎症期では関節内圧が上昇しているため,解剖学的肢位に位置するとさらに関

節内圧を上昇するため疼痛が出現しやすくなります.そのため上方,前方の骨頭の被覆率を高め関節

内圧を下げることで疼痛緩和を図ります上方,前方の骨頭の被覆率を高めるためには肩甲骨を下方

回旋,前傾させることで関節内圧を下げる疼痛回避姿勢となります.人は無意識のうちにこの疼痛回

避姿勢をとりやすいのですが,疼痛が収まり拘縮期に移行すると各筋の伸張性の低下をきたします.

疼痛回避姿勢における関節可動域制限

  疼痛回避姿勢において上記でも記載したように下方回旋,前傾位となりやすいです.

下方回旋位となった場合,上腕骨は相対的に外転位となるため外転筋(棘上筋,三角筋中部線維)の伸張

性の低下をきたしやすくなります.

あるいは,肩甲骨の前傾にて上腕骨は相対的に屈曲位となるため屈曲筋(大胸筋,小胸筋,三角筋前部

線維)の伸張性の低下をきたしやすくなります.

例えば,棘上筋の伸張性の低下にて下方回旋位となった肩甲帯では肩甲上腕リズムが不良となり肩峰

下でのインピンジメントを起こしやすく肩関節挙上時の可動域制限の因子となり得ます.

ちなみに棘上筋の触診方法についてはこちらをご参照ください.

また疼痛回避姿勢を取り除いていかないと背臥位ではベッド上に肩甲骨,上腕骨がつかなく緊張を緩め

にくい環境となり夜間時痛の原因にもなります.

緊張の亢進,疼痛と負の連鎖が起こり慢性期へ移行してしまい疼痛除去,関節可動域改善が難しくなっ

てきてしまうので早めの対処が必要不可欠です.ちなみに夜間時痛についてこちらをご参照ください.

まとめ

 炎症期では関節を動かすことで炎症性の滑膜の増生が起こり滑膜の癒着するため安静が必要です.

しかし関節運動ではなく骨頭内を微細に動かすことで滑膜の癒着を予防することができます.炎症期

に滑膜の癒着を予防し拘縮期には疼痛回避姿勢による外転筋(棘上筋,三角筋中部線維)や屈曲筋(小胸筋

大胸筋,三角筋前部線維)の拘縮予防にいち早く対処することで疼痛の緩和,可動域制限を改善を図れ

るのではないでしょうか.ぜひ参考にしてみてください.

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