“肩を落とす”,”腰が低い”.姿勢と心理の関係性.

 私たちセラピストは,クライアントの姿勢の原因を筋の緊張状態や,筋力の低下,筋インバランス,神経性など身体の構造を基に考えることがあります.しかし姿勢とは他にも精神的な状態も反映しておりうつ傾向な姿勢,威張るような姿勢,見下すような姿勢.姿勢の原因は心理状態も考慮する必要があり,今回は姿勢と心理の関係についてご紹介します.

姿勢と心理の関係性

 背骨は精神的な状態とも深く関わっています.精神的にうつの状況にあると,どうしても胸を狭めた前かがみの姿勢となります.うつむき加減の人をみるとどうかしたのではないかと思います.

 そうした場合,胸郭は膨らみにくくなります.胸郭が膨らまないと呼吸はしにくくなり息苦しくなります.あるいは,胸が張れないと手を上げるのが制限されます.そうしたことで生活することが辛くなると生きていくことが億劫となり,ますますうつ傾向となってしまい悪循環が起こります.

 精神的な状態が姿勢を作り,その姿勢がまた精神状態を悪化することが起こり得ます.

 反対に元気なときは背筋が伸びて,胸を張った姿勢となります.このように背骨の状態は精神状態と密接に関係しています.

 また顎も心の状態を表しています.顎を上げるあるいは出すのは,上から見下す状態になるため,社会的地位の高い人が部下に対する姿勢として捉えることがあり,いわゆる威張る姿勢となります.

 このように姿勢は相手に印象付けることがあり,たとえ口調が柔らかく,優しい人でもそうした姿勢が偉そうに捉えられてしまいクライアントとの信頼関係を損ねる恐れがあり注意が必要です.

 同じように肩も姿勢を構成する部分であり,元気なときには肩を張っていますが,失敗したときには”肩を落とす”と表現するように,張りがなくなります.肩は体の中で社会的な性質を持っている部分で”肩書き”というように,肩は顎と同じように社会的地位と関係しています.

 軍人はその地位を肩に表示し,”肩を怒らす”という言葉も肩を張った様子を表しており,威張ったときの肩です.対人関係でストレスがたまると肩こりを起こしますが,肩に緊張が入ることが原因の可能性があります. 

 腰も姿勢を構成する一部と言えます.”腰の低い人”と言葉がありますが,身を低くすることは人間関係において,下手にでる態度を表します.

姿勢がもたらす印象

 カウンセリング場面で,カウンセラーの人は自身の姿勢を気に掛けるそうです.前かがみとなり前傾姿勢ではクライアントは熱心に話をしてくれて評価が高いそうです.カウンセリングにおいては,相手の話を”傾聴する”ことが必須のこととされておりクライアントの関心の高さが姿勢に現れるからです.

 逆に後傾姿勢は,社会的地位の高い人が低い人と対話するときに取られやすく,相手に威圧感を抱きやすい姿勢となり話を引き出すことが難しくなります.

 また,姿勢の在り方として,相手に対する角度も問題になります.相手に対して背を向ける行為は最初から拒否しており,対話になりません.あまり背を向けて話す人は少ないかと思いますが,半身のみを向けて会話をする場面はあると思います.これは,半分拒否していることになります.したがって半身の姿勢は相手にあまり良い印象を与えません.

 これに対して正面を向くことは,相手の話に”正面きって”対応するという態度を示しており好印象を持たれやすくあります.

 では私たちの正面とは,どこでしょうか?

 私たちの正面は胸骨が相手に向いていることです.例えば,顔だけ相手に向いていても胸骨が向いていなければ正面とはいえず相手に興味がないと印象づけやすくなります.パソコンで作業することに夢中で相手に正面を向けていないことは多いのではないでしょうか.

 姿勢の傾きや向きにより人の印象はずいぶん変わってきます.印象が変わると相手の反応も変わり,信頼関係の構築にも影響していきます.

まとめ

 精神状態で姿勢が変わり痛みや生活の制限を起こすことがあります.逆にいえば姿勢を変えれば精神的な状態も変化することもあります.うつむき加減で生活していれば自ずと心もうつ状態に陥ります.胸を張って前を向くことで気持ちも変化してくるのではないでしょうか.

 姿勢を評価する上で骨格筋や神経,骨など身体構造を評価することは勿論ですが,精神状態も考慮する必要があるのではないでしょうか.

 また姿勢で相手への印象が変わるため気を付ける必要があります.参考にしてみてください.

 

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