筋が伸張されると筋紡錘が発火され筋収縮はより早く強いものとなります.PNFはこの伸張刺激を利用して筋を促通していきます.PNFではパターンを利用するときだけでなく様々な場面で伸張刺激を加え筋を促通していきます.今回は伸張刺激について解説していきます.
伸張刺激は日常生活で利用されている
伸張刺激は筋が伸張されたときに起こります.筋が伸張した場合,その刺激により伸張された筋の運動単位をより多く動員することが可能です.また同じ関節にある共同筋,そして関連した他の共同筋も促通されます.
伸張刺激は日常生活でも利用されており,例えば投球時のコッキング期から加速にかけて肩関節を屈曲,外転,外旋運動をすることで大胸筋の伸張刺激が加わり筋を促通し肩関節伸展,内転,内旋運動が素早くなり投げる力を増大させます.
またサッカーでもボールを蹴る際に股関節伸展,膝関節屈曲運動をすることで腸腰筋,大腿四頭筋に対して伸張刺激が加わり筋を促通し股関節屈曲運動,膝関節伸展運動が素早くなり蹴る力を増大します.
スポーツだけでなく日常生活の歩行においても常に伸張刺激を加わりながら遂行しています.立脚後期では股関節伸展,足関節背屈位となり,腸腰筋,下腿三頭筋に伸張刺激を加わり遊脚期をスムーズに移行するよう利用されています.
臨床の実際
伸張刺激を加える目的として筋力強化,筋出力向上を目的に使用することが多くあります.MMT1ないし2の場合,伸張刺激を加えて運動単位を増やし筋出力を促していきます.
筋は伸張された反対方向に収縮し関節運動を起こします.例えば,肩関節伸展,内転,内旋にて伸張刺激を加えた場合,肩関節屈曲,外転,外旋方向に収縮が働き関節運動が起こります.そのため伸張刺激は,促通したい関節運動の反対方向に伸張刺激を加えることで,目的とする関節運動が促通されます.
伸張刺激の方法は”素早く一瞬で”行います.例えば,手の背屈運動でも自動で背屈運動するのと,素早く伸張刺激を加えて背屈運動をするのとでは背屈のしやすさが違うと思います.
臨床上,運動開始時と運動時に利用されます.運動開始時に伸張刺激を加えることで筋チェーンが繋がりパターンを促通しやすくなります.また運動方向が理解しやすく,運動単位が増加し筋力強化に役立ちます.
運動時に伸張刺激を加えることは,関節運動途中で筋出力が低下した場合,再度筋出力を上げる目的で使用します.また,クライアントに運動方向の理解が得られない場合は関節運動途中に伸張刺激を加え運動方向を理解させる目的でも使用します.
例えば,肘を曲げて荷物を持つこと(肘関節屈曲,手関節掌屈)が困難なクライアントがいる場合,目的とする関節運動に対して反対の肘関節伸展,手関節背屈に伸張刺激を”素早く”加えることで,肘関節屈曲,手関節掌屈の収縮が促通され目的とする肘を曲げて荷物を持つ動作が促通されます.
2関節だけでなく,3関節に対してもそれぞれ加えることもあります.例えば,浴槽など物を跨ぐ動作(股関節屈曲,外転,外旋,膝関節屈曲,足関節背屈)が難しいクライアントがいる場合,目的とする関節運動に対して反対の股関節伸展,内転,内旋,膝関節伸展,足関節底屈に対して伸張刺激を”素早く”加えることで,股関節屈曲,外転,外旋,膝関節屈曲,足関節背屈の収縮が促通され目的とする浴槽を跨ぐ動作が促通されます.
関節が増えれば増えるほど,それぞれに伸張刺激を加えることが難しくなります.PNFのパターンでは,例えば肩関節屈曲,外転,外旋.肘関節伸展,手関節背屈,撓屈,回外,手指伸展のパターンに対してそれぞれ伸張刺激を加えることで筋を促通していきます.その各関節に対して適切に伸張刺激を加えることが難しいので繰り返し練習する必要があり,難しくて挫折してしまう人も多いのです.
しかし伸張刺激を用いることで,筋の強化に役立つことは間違いありません.ぜひ参考にしてみてください.