PNFとは固有受容器を刺激することで神経,筋に対して正しい反応を引き出す,促通することを原点としています.
今回は牽引刺激による反応,促通方法をご紹介します.
牽引刺激による反応
PNFでいう「牽引」とは,関節内を引き延ばすことを指します.関節内が引き伸ばされた場合,関節内がこれ以上引き伸ばされないように,求心性収縮の活動が高まります.そのため求心性収縮が求められる運動性(mobility)を促進させる際に用いられます.
日常生活でも「牽引」による筋活動はみられます.例えば重い荷物を手で持っている場合上肢には牽引刺激が加わり,それに対して関節が引き離されないよう求心性の筋活動が高まります.
先ほども述べたように,牽引刺激は関節内の引き伸ばされた刺激で収縮を促通するものです.牽引刺激が複数の関節に対して加わった場合でも,各々の関節に対して刺激が加わるため各関節ごとに求心性収縮の活動が高まります.
つまり,上肢に対して牽引を加えた場合,肩関節,肘関節,手関節と求心性収縮の活動が高まります.
そのため牽引刺激は各関節に対して求心性収縮が波及されていくためチェーンのように一つに繋げる作用が働きます.
PNFにおいて牽引を用いるときは運動開始時に牽引刺激を加えながらパターンを利用してチェーンのように各関節に筋活動を波及させる目的で用いることがあります.
また,運動域の途中で筋活動が乏しい時に筋反応を増加させる目的で牽引刺激を加えたり,立ち上がり動作の様な遠心性収縮から求心性収縮への切り替えの際に求心性運動の促通を目的に利用したりします.
牽引刺激による促通方法
上記でも述べましたが,牽引刺激を用いて立ち上がり動作の運動を促通することがあります.立ち上がり動作の求心性の活動が少ないあるいは遠心性から求心性の切り替えが不十分なクライアントに対して牽引刺激を用いることがあります.
この場合は運動域の途中で素早く牽引刺激を加えて求心性収縮を促通させます.立ち上がりの動作は体幹前傾するに従い大殿筋による遠心性の活動を高め,その後体幹を起こし遠心性の活動から大殿筋,大腿四頭筋,下腿三頭筋と求心性の活動を高め離殿して立位まで立ち上がっていきます.
この遠心性から求心性に切り替えるポイントで牽引刺激を加え,求心性の活動を高め遠心性から求心性の切り替えをクライアントに理解させていきます.
まずセラピストは前方から肩甲帯を両側から把持します.
体幹前傾を促し,離殿のタイミングで斜め上方へ関節を引き離すように牽引を加えます.
離殿後は大殿筋,大腿四頭筋,下腿三頭筋の求心性活動が促通されるためセラピストは触れているのみで牽引,あるいは抵抗を加えることはしません.牽引,抵抗を加え過ぎた場合立ち上がり動作に必要な筋活動以上に求心性の活動が起こり体幹が伸展してまい,のけ反ってしまったり姿勢の崩れが生じてしまいます.そのため離殿の時に牽引刺激で少しアシストするイメージが良いかと思います.
動作以外でも上肢を挙上させる際も開始時に牽引刺激を加えることで肩関節,肘関節,手関節の求心性収縮が促通されます.
あるいは,股関節伸展活動でも運動開始時に下肢を牽引することで股関節,膝関節,足関節の求心性収縮を促通されます.
あるいはサッカーのキック動作でも下肢を牽引することで,腸腰筋,大腿四頭筋,前脛骨筋の筋活動を促通されます.
まとめ
今回はパターンを用いない動作や運動に対して牽引刺激を加えるものを紹介しましたが,PNFで牽引を利用するときはパターンを用いることが多いです.牽引刺激を加えることで求心性の筋活動が働きチェーンのように促通しやすくなります.是非参考にしてみてください.