動作指導って難しい!!クライアントへ動作指導するためのPNF手技~レプリケーション~

 クライアントへ運動あるいは動作を指導するとき,本来とは違う動きになってしまうことはありませんか?実際にデモンストレーションしてみせても,鏡を利用して指導しても難しいことがあります.そんなときに利用するPNFテクニックの一つにレプリケーションという手技があります.今回はレプリケーションについて解説していきます.

 レプリケーションとは

 

 私たちセラピストは,クライアントに指導した正しい動作ができないと憤りを感じ,不快感を示すことがあります.しかしクライアントに非があるのではなくセラピストに問題があることが多くあります.まずは自身の指導方法を見返し改善する必要があります.動作指導に用いるPNF手技はいくつかあり,以前ご紹介した「リズミックイニシエーション」もその一つになります.

 また今回ご紹介するレプリケーションもその一つであり,レプリケーションとは「複製,コピー」を意味します.レプリケーションを利用して動作をコピーすることでクライアントに目的とする動作を学習させます.利用頻度が高いのはリズミックイニシエーションですが,クライアントに応じて使い分けることでクライアントに理解のしやすい方法を選択することが可能となるので是非覚えてみてください.

レプリケーションの方法

 レプリケーションの方法としては,まずクライアントは目的とする動作の最終ポジションで保持,次いでセラピストは他動的に目的の動作の反対方向に少し戻します.そしてクライアントは抵抗あるいは自動介助,自動運動にて目的とする動作の最終ポジションまで動かします.戻す範囲を徐々に拡大させ目的とする運動を学習させます.

①目的とする動作の最終ポジションにクライアントを位置させる.          

②①の位置でセラピストは徒手抵抗を加え,クライアントは静止性収縮を働かせ保持させる.(静止性収縮にて保持させることでクライアントに最終ポジションを認知させる.)

③一度クライアントをリラックスさせた後,セラピストは他動的に目的とする運動と反対方向に少し戻す.

④クライアントに適切な抵抗あるいは自動介助,自動運動にてクライアント自身で①まで戻す.

⑤①~④を繰り返し徐々に運動範囲を広げていく.

⑥目的とする動作の開始位置から自動運動にて自律して最終ポジションまでの動作を獲得.

 レプリケーションは,静止性収縮を加えることでクライアントに目的とする動作のゴール地点を認知させることが可能となります.人はゴール地点が明示されていれば,そこに向けて進むことができます.動作だけでなく人生においてもゴールを明確化することでその目標に向けて走ることが可能です.ゴールが不明であれば運動方向はあらゆる方向に向かい動作獲得が難しくなります.レプリケーションはゴールを明確化して目的動作を獲得させていきます.

 しかし目的とする運動方向から離れていく場合も勿論あります.その場合は目的とする動作のゴール地点をもう一度認知させます(静止性収縮を加え再学習).あるいは動作可能な運動範囲まで戻り,再度徐々に運動範囲を広げていくと改善する場合があります.

 抵抗運動は運動方向を誘導しやすいため,まずは抵抗運動から動作を学習させると動作獲得促しやすいです.

レプリケーションの実際

 具体的な例を挙げると肩関節屈曲運動の動作を獲得させたい場合,まず肩関節の屈曲最終ポジションに位置させ,静止性収縮にて保持させます.

 次いで,腕を少し下げ抵抗運動あるいは自動介助,自動運動にて屈曲運動を行い最終ポジション位置まで挙げていきます.

 さらに腕を下げ運動範囲を拡大させ抵抗運動あるいは自動介助,自動運動にて屈曲運動を行い最終ポジション位置まで挙げていきます.

 運動方向がズレてきた場合は再度最終ポジションで静止性収縮にてゴール地点を認知させたり,運動範囲を一度狭めて可能な運動範囲を繰り返し実施して学習させていきます.最後に目的とする屈曲運動の開始位置から最終ポジションまで自動運動にて自律して可能であれば,動作獲得となります.

まとめ

 レプリケーションを利用することでクライアントに正しい動作を促すことが可能です.またレプリケーションのゴール地点を認識させるという考え方を取り入れるだけでも動作指導の幅が広がるのではないでしょうか.是非参考にしてみてください.

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