体温が一度下がることに免疫力が30%下がると言われています.現代人は平均体温が36.2℃と低体温の人が増えており,アレルギー,花粉症などに罹る人が増加しています.
では,なぜ体温が免疫と関係しているのでしょうか.免疫と体温の関係性,低体温の原因,体温を上げるにはどうしたらよいか解説していきます.
免疫と体温の関係性
体温が36.5~37.1℃が免疫力が活性化して健康には理想的とされています.では,なぜ体温が高いと免疫力が高くなるのでしょうか.
一つは血流が良くなるからです.血液には栄養や酸素を細胞に届けることや,老廃物を運搬することは周知の事実かと思われますが,そのほかに免疫機能が備わっている白血球が血液に存在しているからなのです.
白血球が血液を介して体内を流れることで,ウイルスや細菌など異物が侵入していないか,いわばパトロールしているのです.そうして異物を発見した場合白血球自身が排除するとともに,白血球の応援隊を呼びます.
こうした白血球の素早い対応によりウイルスや細菌に対して駆除し健康を保っているのです.
しかし,低体温により血液循環が悪かった場合,異物の侵入を感知するのが遅れ,対応が遅れることで細菌やウイルスが増殖し病気に陥ってしまいます.
もう一つは酵素が活性化するからです.酵素というのは,食べた食べ物を消化し栄養素に分解,エネルギーとして産生するとき,老廃物として排出するときに欠かせない存在です.
つまり酵素は人間が生命維持に不可欠であり,酵素が不活性であると食べ物を栄養素として分解することもエネルギーとしても産生することもできずに細胞自体が不活性となり病気を招いてしまいます.
大切な酵素が活性化するのが,体温が37℃台のときです.体温が高ければ高いほど酵素の働きが良くなるのです.
低体温はがん細胞を増殖させ,増殖スピードが速くなり,がんを発症しやすくなります.低体温はあらゆる病気にかかりやすく逆に体温を上げることは血流の促進,酵素活性に良く「万病に効く薬」なのです.
自律神経,ホルモンバランスの乱れが低体温の生み出す
低体温になる原因の一つは自律神経のバランスの乱れです.
自律神経には交感神経と副交感神経があります.交感神経優位となると,血管が収縮し血圧の上昇,気道が拡張して心拍が速くなります.一方胃や腸など消化器系の働きは抑制されます.運動するときや仕事をするときなど,脳や筋肉をアクティブに活動させるのに適した状態になります.
一方副交感神経優位となった状態では,ちょうどこれと逆の状態になります.血管が拡張し血圧は下降し,気道は収縮して心拍が緩やかになり,消化器系の働きが活発になります.これは,身体を休めたり,食事を消化,吸収するのに適した状態です.
この自律神経は日内リズムというものが備わっており,日中は交感神経優位にて活動,夜は副交感神経優位にて身体を休めるというリズムがあります.
しかし,過度な仕事や逆にだらけきった生活,昼夜逆転している生活などによって交感神経の過敏や副交感神経の過敏となってしまい自律神経のバランスの乱れが生じます.こうした状態が続くと低体温となり病気を招きやすくなります.
では,なぜ自律神経が乱れると低体温となるのでしょうか.一つは血流障害があげられます.
例えば,過度な仕事しすぎることで,交感神経優位となってしまった場合血管が収縮してしまうことで血流障害が生じ低体温となってしまいます.また交感神経優位となると白血球の顆粒球(対外から侵入してきた細菌に対して働きます)が増加します.一見してみると良いように思えますが,必要以上に顆粒球が増加しすぎると,その後死滅するときに発生する活性酸素によって体のさまざまな部分の組織が破壊されます.またこうした大量の活性酸素は血液を酸化させ,いわゆる「どろどろの血液」に変えてしまいます.
つまり交感神経が過敏となった場合,血管収縮と活性酸素によって血流障害が起こるため低体温となるのです.
副交感神経は血管拡張するためはじめは血行が良くなります.しかし長期間にわたり副交感神経が優位となるとかえって血流の流れが悪くなります.これは水量が同じなら,川幅が広いほうが流れが緩やかになるのと同じです.
こうして交感神経,副交感神経どちらも過敏でも血流障害がおこり低体温となってしまうため,自律神経のバランスを崩さない生活が大切となってきます.
低体温の原因のもう一つは,ホルモンバランスの乱れです.ホルモンバランスは身体を構成している細胞が受けたダメージ,つまり身体の内側で生じるストレスに対して働きます.
このホルモンバランスを司っているのが副腎ですが,この副腎は細胞がダメージを受けたときにコルチゾールというホルモンを出すことで糖(グルコース)が細胞に行き渡りやすくします.そうすることで細胞のダメージを回復させるという役割を担っています.
つまり長期間ストレスが加わると副腎が疲弊してコルチゾールの出せなくなり細胞の回復が遅くなり,細胞自体にエネルギーが低下するため低体温となります.
低体温はストレスにより自律神経の乱れによる血流障害,ホルモンバランスの乱れによる細胞の不活性化が要因となっています.
体温を上げる方法
自律神経が乱れると低体温となるとお伝えしました.そのため体温を上げる方法としては,自律神経を整える生活を心がける必要があります.
つまり,自律神経のリズムに合わせて日中活動して,夜睡眠をとることが大切です.また日中運動不足だと副交感神経優位となりやすく,逆に過度な仕事のしすぎだと交感神経優位となり自律神経が乱れるため,自分がどちらが優位なのか判断して改善する必要があります.交感神経優位の場合は仮眠(20分以内)をとることで適度に副交感神経が刺激されるので良いと思います.
またゆっくりお風呂に浸かることも身体の外側から体温を上げられるのでおすすめです.忙しくてシャワーで済ませる人も多いのですが,体温を上げるためにはしっかりと浸かることが大事です.
他にも白湯を飲むこともおすすめです.免疫細胞が多い腸が温まるので免疫力が高まります.
これらはいずれも一時的なものなため常に体温を恒常的に高く維持するためには筋肉を鍛える必要があります.筋肉は熱産生が多く,筋肉量が多い人ほど基礎代謝が高く,体温も高まります.
まとめ
低体温が免疫力と病態の更なる悪化を招く「負のスパイラル」を生み出すのとは反対に,体温の高い状態を作り出していけば,自律神経,ホルモンバランスが整い免疫力を高め,健康維持機能を正常に保つことができるようになります.是非参考にしてみてください.