マッスルインバランスとは

 マッスルインバランスとは”筋の不均衡”を意味し理学療法士が身体運動を考える際に極めて重要な考え方です.日常生活において過度に使われる筋や不活動により弱化する筋があります.日常生活で繰り返されることで筋のインバランスは生じ姿勢の崩れを助長していきます.今回はマッスルインバランスについて解説していきます.

マッスルインバランス

 筋骨格による疼痛は感染,外傷,腫瘍など原因が明らかなものを除けば個人の姿勢,生活習慣,職業,スポーツなど毎日が繰り返されるメカニカルストレスが原因であることが多くあります.これが特定の筋,筋膜,腱,関節などの組織に炎症や損傷を引き起こします.

 特定の筋の過剰使用は,筋の過緊張を起こし短縮傾向となります.一方,拮抗する筋は相反抑制を受け弱化傾向に陥ります.

 例えば大腿四頭筋の過緊張は,拮抗する大殿筋やハムストリングスの弱化を生じます.

 大殿筋やハムストリングスが弱化した場合,後面での保持が難しくなるため,さらなる上半身質量中心を後方へ移動させ前面の筋で保持しようと姿勢が変化していきます.

 

 このように生活していく中で特定の筋の過剰使用は筋のインバランスがつくられ姿勢の崩れを引き起こし正常な運動パターンを変化させます.この異常な代償運動パターンが機能障害の原因となります. 

ヤンダの分類

 ヤンダらは全身の筋群を硬くなりやすい筋群と弱くなりやすい筋群に分類しました.個別性を考慮する必要はありますが,どの筋が硬くなりやすいか,どの筋が弱くなりやすいかを把握しておくと予防は勿論治療においても焦点を絞りやすいため参考にしてみてください.

硬くなりやすい筋(上肢帯)弱くなりやすい筋(上肢帯)
後頭下筋群中部,下部僧帽筋
大腰筋・小腰筋菱形筋
上部僧帽筋前鋸筋
肩甲挙筋頸部深部屈筋群(頚長筋,頭長筋)
胸鎖乳突筋上肢伸筋群
広背筋回外筋
上肢屈筋群顎二腹筋
回内筋
咀嚼筋
硬くなりやすい筋(下肢帯)弱くなりやすい筋(下肢帯)
腰方形筋腹直筋
胸腰椎部脊柱起立筋腹横筋
梨状筋大殿筋
腸腰筋中殿筋
大腿直筋小殿筋
腸脛靭帯内側広筋,外側広筋
ハムストリングス前脛骨筋
短内転筋腓腹筋
下腿三頭筋(特にヒラメ筋)
後脛骨筋

臨床の実際

 例えば水泳選手は大胸筋が発達し拮抗筋の菱形筋や僧帽筋中部線維は相対的に弱化することで外転肩となりやすいです.このように外転肩の状態で肩関節外転運動をした場合,外転運動に伴う肩甲骨の内転運動が生じにくくなりインピンジメントが引き起こしやすくなってしまいます.

 また,上記で述べたように股関節の屈筋群に過緊張や短縮があると,大殿筋の抑制が起こり,股関節伸展の運動を腰椎伸展で代償する異常運動パターンが習慣化してしまいます.腰椎伸展運動を繰り返しことにより腰椎へのメカニカルストレスが加わり疼痛を引き起こしやすくなります.

まとめ

 日常生活の繰り返しにより筋の過剰使用を生じマッスルインバランスが引き起り姿勢の乱れないし疼痛を惹起します.マッスルインバランスを把握し弱化した部位は筋力強化を図り,筋の過剰使用の原因を考え治療していくことが大切だと思います.参考にしてみてください.

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