ケアラーって知っていますか?ケアラーを最優先で考える必要がある理由

 「大切な人をケアしているあなたも大切な人です.

 認知症,高齢者,病人,障害者と目が行きがちなのは当事者ばかりではないでしょうか.もちろんその人たちを治すことは大切なことですが,その人たちをサポートする人を支援することにも目を向ける必要があります.ケアする人を支えることが巡り巡って当事者を支援することに繋がっていくのです.今回はケアラーについて解説していきます.

ケアラーとは

 ケアラーとは,介護や看病などケアが必要な家族や近親者を無償でサポートする人のことを言います.昨今の高齢者の人口増加に加え社会保障財源や介護保険財政の圧縮・逼迫を背景に、介護は在宅・地域でとの流れが主流となっており,それをサポートするケアラーの人口も自ずと増加しています.ケアラーの増加に伴い様々な問題も出現してきています.

 その一つが高齢者虐待です.虐待者は息子(40.3%)、夫(19.6%)、娘 (17.1%)となっており、その発生要因としては、「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」が 23.4% で最も多く、「虐待者の障害・疾病」22.2% となっています。

 また介護殺人も深刻な問題の一つであり平均して年間40件、毎月3件もの介護者殺人がおきているのです。要介護高齢者の地域での生活を守るということは、介護者の生活を守るということでもあり、それが介護保険の理念である尊厳を保持した生活を継続できる社会の構築につながっていくと言えます。

 今後在宅復帰,在宅生活の継続を目指す人にとってはケアラーについて考えなくてはいけないことなのです.

 ケアラーの実態調査

 2020年3月に埼玉県で全国初となるケアラー支援条例が制定されました.今後ケアラーを支援する取り組みは益々増えてくることが予想されます.

 今回埼玉県はケアラー支援計画を作成するにあたって実態調査を行ったのですが,その結果様々なことがわかりました.一部をご紹介すると...

 ケアラーの7割が女性!?

 被介護者の7割が在宅で生活しています.つまりケアラーは在宅でケアをしていることが多いことが分かります.では,ケアラーの就労状況はどうなのでしょうか.仕事をしながらケアをしているのか.あるいは仕事をしていない人がケアをしているのか.はたまたケアをするために仕事を辞めているのか.

 ケアラーの就労状況は主婦(夫)が最も高く,次いで無職,非正規雇用者がケアをしている状態です.つまり仕事していなくあるいは仕事を短時間して在宅でいる時間の長い人はその分ケアをしていることになります.

 現在女性の社会進出が叫ばれ夫婦共働きが多いですが,それでもままだ女性の方が在宅にいることが多く,それに伴って在宅でケアをしている数も多いものと思われ7割の人がケアラーとなっていることが推察されます.

ケアラーの6割が自身の心身の健康に悩んでいる!?

 ケアラーはどのくらいの頻度でケアを行っているでしょうか? 

 身体的介助だけでなく家事,買い物同行,金銭管理,通院の援助,事務手続きなど想像しているより多岐にわたりケアを行っています.その様々なケア内容に対してなんとケアラーの7割が何らかの形で毎日ケアしているのです.

 介助等による腰,肩の痛みから,認知症のケアによる精神的な疲労など,毎日ケアをしているとそれだけでもケアラーの心身の健康に悩みを持っている理由がわかりますよね.

 それだけでなく,毎日のケアにかける時間を調査した結果,「2時間以上4時間未満」で最も多く.日々ケアにかなりの時間を要していることがわかります.私たちはケアだけに時間をかけるわけには行きません.子供がいれば子供の遊び,学校行事の参加など,旦那様がいれば旦那様の食事を作ったりする必要があったりします.そのダブル,トリプルタスクが心身に健康を及ぼす可能性があるのです.

 

ケアラーを考えよう

 ケアラーは大切な人をケアすることで自分に対して自由な時間が減り,疲労が蓄積することで健康を害し,楽しむ時間や自己実現の時間が削られていきます.

 「大切な人のケアをしているあなたも大切な人です.」

 ケアをしている人の健康が改善され,元気な姿をみせることでケアされている人も元気になるのではないでしょうか.逆にケアラーが病気や健康を患った場合,ケアすることができなくなり,その当事者も健康を維持することが困難となり,その家庭が崩壊する可能性があります.

 その家,その家族を守っている人,大黒柱をまずケアすることが大切であり,私たちセラピストはケアをしているケアラーをケアする必要性があるのではないでしょうか.

 私は今後ケアラーを支援する自費診療を取り組んでいく考えであります.皆様も是非ケアラーについて考えてみてください.

 

 

 

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