めまいに潜むリスク.めまいを鑑別する必要性.

 めまいを軽くみてはいけません.めまいの背後には心血管疾患,脳血管疾患,急性出血など隠されている場合があるため,これらを鑑別できる能力が必要になってきます.

 めまいの原因は多岐にわたりますが性質から回転性めまい,失神性めまい,不動性めまいの3つに分類されます.

 めまいの訴えがあった場合やいつもと異なりぼーっとしている場合は速やかに意識レベルの確認を行う必要があります.会話が行えない場合は脳血管疾患の疑う所見になるためただちに救急搬送を行う必要があります.

 意識レベルの低下がなく,会話が可能であれば,詳細に問診して精査していきます.

回転性めまい

「壁や天井など自分の周囲がぐるぐる揺れいている感じ」「自分の身体自体がぐらぐら揺れている感じ」といった訴えがあった場合は回転性めまいと判断します.

 回転性めまいには安静時のめまいの原因として多い,突発性難聴,メニエール病,良性頭位性めまいなど末梢性の前庭性めまいが含まれます.

 前庭性は内耳の前庭系が障害されることで起こり,平衡感覚と聴覚を司っているため前庭が障害された場合聴覚症状(耳鳴り,難聴)が出ることがあります.そのため回転性めまいの場合は聴覚の異常を確認する必要があります.

 また回転性めまいは脳血管疾患によっても起こるため,麻痺症状(しびれ,感覚障害,随意性低下,運動失調,呂律緩慢)も併せて確認する必要があります

失神性めまい

「意識が遠くなるような感じ」,「気を失うような感じ」,「目の前が真っ白になるような感じ」といった訴えがある場合,失神性めまいと判断します.

 離床時に最も多い起立性低血圧は失神性めまいに分類されます.血圧低下を認めた場合は,下肢挙上,呼吸ポンプ(深呼吸)や筋ポンプ(足関節底背屈運動)により静脈還流を促し血圧の上昇するか確認する必要があります.

 それでも血圧の上昇しない場合は,急性出血や高度な脱水である可能性があります.

 また離床時血圧変動が予想される場合は橈骨動脈を触知し拍動の減弱,消失を確認しながら離床を試みる必要があります.橈骨動脈での拍動が消失している場合はおおよそ最高血圧が80mmHg以下が予想され低血圧となっている可能性があるため一度離床を控える必要があります.

 失神性めまいの場合,起立性低血圧と鑑別が必要な緊急性の高い病態として,心血管疾患(不整脈,弁膜症,心筋梗塞,心筋症,大動脈解離など)や消化管出血などの急性出血,高度の脱水などがあります.

 脈拍数の減少や脈拍のリズムの異常を認めた場合は心血管疾患を疑います.

脱水が疑われた場合のフィジカルアセスメントはこちらをご参照ください.

 血圧低下の有無,不整脈の有無,水分バランスなど併せて確認する必要があります.

不動性めまい

「ふわふわする感じ」「ふらふらする感じ」「体が宙に浮いてる感じ」といった訴えがあった場合は,不動性めまいと判断します.

 離床時に最も多い起立性低血圧は不動性めまいにも分類され,失神性めまいの症状と併せて確認する必要があります.

 不動性めまいは,脱水,低血糖,貧血,薬物の副作用などにより生じる場合があります.

 血糖値が低下すると中枢神経の働きが低下しめまいから意識障害へ至るおそれがあります.

 貧血では酸素運搬機能をもつヘモグロビンが減少しているため,脳への酸素供給が減少した結果,めまいを生じます.

 降圧薬や抗精神病薬の副作用でめまいが生じることがあります.

血糖値の異常やヘモグロビン値の低下を確認したり,投与薬剤について再評価する必要があります.

まとめ

 生命の危機に関わることが少ない前庭系めまいの方が,激しい嘔吐をきたしたり,歩けなかったり,症状が重いことが多いです.

 しかし,めまいの症状の程度と疾患の重症度は比例しません.めまいが軽いからといって重症でないとは限りませんので注意が必要です.参考にしてみてください.

 今回の参考文献は日本離床研究会が出版している本で,写真も多く見た目も読みやすく難しい言葉もほとんどない本となっています.興味のある方は購入してみてはいかがですか. 今回の参考文献は日本離床研究会が出版している本で,写真も多く見た目も読みやすく難しい言葉もほとんどない本となっています.

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また「疲れの原因を知るためのフィジカルアセスメント」も記事にしていますので,併せてご一読ください.

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